Varna 2013 ブルガリア

WORLD VETERANS FENCING CHANPIONSHIPS Varna2013

home > varna2013> 参戦記録1

Varna2013参戦記録1

私が参加したのは50代♂エペです。例年、もっとも参加者の多いカテゴリーでヴァルナではエントリーは27カ国から78名、実参加者73名でした。(スペイン等エントリー1名で棄権がありましたので実参加国数は27未満です。)
以下、私の参戦記録です。

試合前

試合は9:00開始です。 7:30のシャトルバスに乗り、8:00前に会場入りします。 国内予選等エペの試合は「フルーレの後」のことが多く、 アサイチの試合は久しぶりです。ですがあえて時差ぼけで 4時から5時に目が覚めるのをそのままにしています。 この日も5時に起きています。 起床から4時間たっていますので「朝の試合の違和感」はありません。
会場に着いた後は 日本人選手と軽くファイテングをしてアップ完了です。 組み合わせはホテルの掲示板に6:00前から張り出されており、会場入りの前から判っています。 私のプールは、カナダ、スペイン、スウェーデン、スロバキア、オランダ、ポーランドの 選手がいます。 試合開始10分ほど前に自分が試合を行うピストに入ります。

ベテラン選手権は公式の年代別世界選手権ですので、 国際フェンシング連盟のレギュレーションに則り、全員、名前(苗字)と国名コードの入った ユニフォームを着用しています。ですから自分の対戦相手はすぐに判ります。 私は身長169cmで日本選手の中でも小さいのですが、意外にカナダとオランダの選手が 私とほぼ同サイズです。スウェーデンの選手はでかいです。北欧のイメージ通りです。 東欧の二人は私より背が高いですが驚くほどではありません。この二人は横のサイズに驚かされます。 正直なところ、アスリートの体型ではありません。見事なアンコ型です。 私がこれまで対戦した誰より、ポーランドの選手が重たいのは間違いありません。 スペインの選手は見当たりません。

オランダの選手と目が合います。 向こうから声を掛けてきます。 オランダさん「はじめまして、○○です。」と名乗りながら背中のネームを見せます。 お名前と国コード「NED」を再確認します。 私「あ、オランダの方ですか。日本から来ました●●です。今年、50歳なので初出場です。」 オランダさん「私もです。今年、50歳で初出場です。このプールにはヨーロッパベテラン選手権で上位に入ったビックネームがいますよ。」 私「そうなんですか。私は誰一人知らないです。」 オランダさん「知らないほうか良いかも知れないですよ。頑張りましょう。」 って感じの雑談しながら試合開始を待ちます。 私は意外に落ち着いています。予選のほうがはるかに緊張していた気がします。 初戦はプール内の2戦目、まだ現れていないスペインの選手とです。

予選第1戦

10/4 9:00からまず予選が始まります。 予選は7人ごとの総当り戦です。約20%の選手が予選落ちします。 今回、50代♂エペは60人上がりです。 つまりは、予選を勝ち上がると、ベスト64トーナメントとなり、 予選1位から4位まではシードされベスト32トーナメントからの開始になります。 0勝では当然、勝ち上がれません。1勝で勝ちあがれる場合もあれば2勝でも予選落ちする場合もあります。 私のプールはスウェーデンの選手とカナダの選手の試合から始まります。 スウェーデンの選手が簡単に勝ちます。オランダさんの言う「ビッグネーム」がスウェーデンの選手であることは明白です。 次が私とスペインの選手との試合です。 ワイヤーをつないでピストにあがると、主審がなにか言って来ます。 どうも「お前じゃない」と言っているようです。 よくわかりません。 スコアーカードを見せられ、ようやく理解します。 スペインの選手は棄権です。 ワイヤーを外していると、オランダさんが寄ってきます。 オランダさん「どうしたの?」 私「ひとりリタイアだって」 オランダさん「リタイア?abstentionのこと」 私「あ、そうabstention」 英語は得意ではありません。 ですが、オランダさんと私の共通の話題はひとつだけですので なんとなく判ります。 ポーランド対スロバキアの巨漢対決が始まります。 ポーランドの選手のほうが実力上位のようです。 次がビッグネーム対オランダさんです。 オランダさん、惨敗です。 次がやっと私の番です。 カナダの選手とです。

「地球の裏側まで行って、1本も取れなかったらどうしよう」 昨年、ベテラン選手権を目指すことを再度(再度の意味は別の機会に)決めた後に、 何度か思ったことです。 カナダの選手との試合が始まります。 深めの攻撃を仕掛けてきます。 私のパラッドシクスト、リポステが決まります。 まずは1本取りました。肩の荷が降りるというか、最悪の事態はもうありません。 2本目、再び深めの攻撃を仕掛けてきます。上腕にコントルを出します。 簡単に決まります。 2-0でリードです。 私の気持ちは「1本も取れなかったらどうしよう」から「こいつ、弱いよ。5-0で勝ってやる。」に 変わります。 再び、胸を狙った攻撃を仕掛けてきます。 パラッドカルトリポステ、決まったと思ったら相手のルミーズが残ります。 これで2-1 再び同じような攻撃を仕掛けてきます。今度はコントルを出します。 ポイントが定まりません。アタックを食らってしまいます。 これで2-2です。 お互いに決め手なくタイムアップです。 1本勝負のプライオリティは私が取りました。 で、同じようなアタックを食らって3-2 初戦、黒星スタートです。 今回、国内予選でも最初、調子よく取った後、逆戦されることがよくありました。・ 技術よりもメンタル面での課題と思っています。 まずは負けてはいけない相手に負けてしまいました。 観戦して頂いていた(と言うかビデオを取って頂いていた方)から 動きが硬いと指摘を頂きます。緊張していないつもりでしたが 無駄な力が入っていたようです。

予選第2戦

次の相手はスウェーデンのビッグネームさんです。 私より15cm以上背が高いです。 私は女子供には強いです。 自分より5cm以上背が低い相手には負ける気がしません。 「上から前腕を狙う。外したら肩を狙う。相手が深い攻撃をしてきたら、パレカルトオポジション」 これが私の基本パターンです。 で、自分より背の高い相手に同じことをやられたら・・・負けます。・・・でも・・・一応、それに対する対策は考えて来ました。 ・・・次元が違いました。 ビッグネームさんは上腕など狙っていません。 私の「右手の親指の付け根」を狙ってきます。 外側からフリッキング気味に狙ったり、フリッキングなしの大きな角度のアンギュレールで狙ってきます。私はリーチの差から同じ角度では狙えません。 私のガルドを潜り抜け、親指が突かれます。 手の指だけではありません。足も・・親指を突かれます。よけたつもりが早いです。 10年以上前、フルーレの世界選手権予選に出たことがあります。それが私が参加した最後のフルーレの試合です。 その時、日本のトップ選手にフリッキングを5本くらいました。その時の突かれた感覚は今でも覚えています。 スウェーデンのビッグネームさんのフリッキングはそれよりも軽い突きです。まったく痛くありません。 エペでフルーレよりも軽いフリッキングです。 簡単に4-0になります。 泣きたくなります。これだけの敗北感は記憶にありません。 本当に泣きそうです。 4-0から最後の1本を狙って、比較的安直に胸を突きにきました。コントルシスを返します。決まりました。 4-1です。 少しだけ希望が沸きます。「このレベルの選手でも気を抜いた攻撃なら対処できる」と。 次に明らかにドゥーブル(両突き)狙いの攻撃を仕掛けてきました。思惑通り、ドゥーブルで 終了です。 結果的にはこのスウェーデンの選手は予選1位で勝ちあがります。 予選プールでは私が2本取りましたが他の選手は0もしくは1本で負けています。 「4-0からのあの安直な攻撃を引き出せれば、こいつに勝てる可能性は0ではない」と 辛うじて思えます。 ビデオを撮って下さっている方から、前の試合より硬さが取れていると声を掛けていただきました。 少し、気が楽になります。本当にありがとうございました。 次こそは勝ちたいと思います。 次はオランダさんです。身長は一緒です。

予選第3戦

オランダさんとの対戦です。 結果から書くと、私の負けです。 タイムアップからの1本勝負で負けました。・ 私は今回の予選5試合中3試合が3分間で5本に至らずタイムアップからの1本勝負になっています。 オランダさんは予選5試合の内、4試合がタイムアップになっています。 私と同じような戦い方をする選手です。 オランダさんがリードして、私が追いつく展開です。 思い通りのアタックとパラッドリポステを決めることはできました。 最後に取られた1本を除けば内容は悪くなかったと思います。 とは言え、最後の1本が最悪でした。 タイムアップ後、プライオリティは私につきました。 オランダさんはすぐさま、攻撃を仕掛けてきます。 ここまでの3分間では見せなかった速さです。全く想定していなかったスピードでした。私のコントルは伸びきらず、あっさりと負けます。 もし、過去に複数回対戦ずみであれば、十分に対応可能で、「ありがとう。いただきます。ごちそうさま」って攻撃、簡単にコントルを決めることができる攻撃だったかもしれません。 でも、想定外でした。 「こんなに早いアタックを隠していたんだ・・・。完敗・・」というのがその瞬間の素直な気持ちでした。 対戦後、「今日は、僕がラッキーだったよ」と言って来ます。 「ラッキーじゃなくて、実力だよ。あんな早いアタックを持っていたなんて、思いもしなかった」と答えます。正確には、英語でそういったつもりですが、どこまで伝わったかは判りません。 勝たなければいけない相手にまた負けてしまいました。

予選第4戦

いよいよ後が無くなってきます。 次はポーランドの選手です。 まず、私の剣が上向きに湾曲していると主審にアピールしてきます。 主審は私の剣を手で曲げるしぐさをしますが、まあどうでもいいって感じです。 実際、ポーランド野郎の剣のほうが下向きに湾曲しています。 先にも書きましたが、このポーランド選手は腹が出ています。 負けたくありません。 2分10秒の間、お互いに点が入りません。思いがけず残り50秒でフリッキングを決められてしまします。 私は主審に私のポイント(剣先のことです。日本ではポイントと言いますが英語圏ではTipと呼ぶこともあります。)の確認を要求します。 問題なく反応しました。 5≠Pで負けます。残りの50秒間は切れてしまいました。最悪です。・ 次にこの選手と対戦することがあったら必ず冷静にボコリます。 今回は完敗です。自分に負けた気分です。

予選第5戦

予選最後の試合です。 試合前にオランダさんが声を掛けてきます。 「いくつ勝っている?」 私は憮然として答えます。「zero」 オランダさんは私が2つくらいは勝っていると思っていたようです。 申し訳なさそうに「とにかく頑張れ」みたいなことを言います。 言われなくても・・・・・・ スロバキアの選手が相手です。 開始30秒で不用意に突かれます。 日本で戦ってきた相手より強いとは思いません。 1分後に1本取り返します。 で、そのままタイムアップです。 私も相手も決め手がありません。 プライオリティはまたまた私です。 良いのか悪いのか判りません。 プライオリティはいらない気分でしたが、3連荘です。 30秒程度でクードゥブル((両突き)。 その後、残り10秒を切って相手が仕掛けてきます。 相手の剣身が私のすねを叩きます。 でも剣先は・・・空を斬っています。 私もたまに同じことをやります。 打つ手が無くなって、最後に相手の脚を狙って・・・、肩口にコントル喰らう・・。 でも、今回はそれをやったのは私ではなく対戦相手です。 私は相手の空いている肩口にまっすぐ剣を伸ばします。 世界ベテラン最初の一勝が転がり込んできました。 隣のピストの日本人選手が右手を突き上げてくれています。 オランダさんが「こんぐらぁ」って言って来ます。 ビデオを撮ってくださっていた方が「勝ったとこ、ちゃんと撮ったよ」と微笑んでいます。 「50歳で世界一になる」数年前に設定した目標は遠いままです。 決勝トーナメントに出れるかどうかは微妙です。 でもとにかく勝ちました。

Varna参戦記録

ヴァルナと近郊ガイド

経由地イスタンブール

ページのトップへ戻る